「自分らしい働き方」に興味がある人は、ニューヨークへ来てほしい。世界の広告ビジネスを牽引する日本人エグゼクティブがNYで働きつづける理由〜株式会社デジタルインテリジェンス取締役 榮枝洋文さん〜

「とにかくニューヨークで働きたい」そんな漠然とした夢からスタートし、今ではグローバルでの広告ビジネスを牽引するまでになられた、ニューヨークで活躍する日本人の先人がいます。


今回お話を伺った、マーケティング・コンサルティングの株式会社デジタルインテリジェンス取締役の榮枝洋文(さかえだ ひろふみ)さんです。

榮枝さんは、2012年まで大手広告会社の株式会社アサツー ディ・ケイ(以後、ADK)アメリカ法人にてCFO兼副社長を務めていらっしゃいました。

世界から注目されるタイムズ・スクエア年末の「カウントダウン」で有名なビルのデジタル広告を、頂点から3社枠の契約を日本企業向けに獲得。これは今でも日本企業の快挙となっています。


「挑戦する気持ちを持つ人は、どんどんニューヨークに出て実践を積んで欲しい」と、多くのビジネスパーソンや学生を支援されている榮枝さんに、ニューヨークで生きつづける理由を、PRライター水澤がお伺いました。



ニューヨークでは何をやってもいい!ここは、自分が見つかる街

───榮枝さんは、なぜ「ニューヨークで働きたい」と、思われたのですか?

榮枝洋文(以下、榮枝):卒業旅行のときに、内定が決まっていたADKのニューヨークオフィスとロサンゼルスオフィスへ遊びにいったことがきっかけでした。


オフィスがめちゃくちゃかっこよくて、女性スタッフもきれいな人ばかり!

「絶対、ここで働こう」と思いましたね。そんな単純な理由でした(笑)当時の支社長にお会いしたときには「ここで働きます!」と宣言して帰りました。


入社当時は、希望した、海外案件をあつかう部署の配属だったので、帰国子女やネイティヴの人が多い職場でした。だから、海外との仕事において、どうしても英語での「仕事の差」があったんです。

自主的に英会話教室に通ったり、ラジオ講座を必死に聞いたりしましたが、差がつく一方なのを感じていました。

そんな時期でも、入社前にアメリカの支社長に「ここで働きます!」と声に出して伝えていた自分の言葉が背中を押しつづけました。次第に「現地へジャブン!と飛び込まない限り、英語での仕事は進まない」と覚悟を決めることになりました。


「とにかく英語圏へ!」と、香港に駐在員として飛び出すチャンスをつかみ、そこで英語での「仕事」を磨き、思い描いたニューヨークで働けるまでに至りました。

実際、最初にニューヨークに赴任したとき、当時の米国社長が「お前、ほんとうにきたな」と声掛けしてくださったのをうれしく覚えています。



───ニューヨーク在住17年目でいらっしゃいますが、ニューヨークの魅力ってどんなことでしょうか?

榮枝:たくさんありますが、1つあげるとすれば「考え方の多様性」です。

ここには、「何をやってもいい自由さ」と「何をやっていいのかわからない自由さ」とが共存しています。

日本にいれば、青は青だと決まっていますよね。そこで「赤だ」と言い始めると「空気を読め」と言われるでしょう(笑)


それに対してニューヨークでは青でも、赤でも、ぐんじょう色でも歓迎されます。

決して、何でもやり放題の自由という意味ではありません。むしろ、ニューヨークには(日本以上の)ルールも法律も秩序もあります。

そんなルールの中にも「色んな意見が沢山ある」ことを互いに認め合う自由さがあるのです。アメリカやニューヨークに来たことがない人には「この感覚」を体感していただきたいという想いがあります。



ニューヨークには、つかめるビジネスチャンスが目の前にある

───これまで、ニューヨークでさまざまな日本人に出会われたと思いますが、どのような印象でしょうか?

榮枝:ニューヨークには、日系企業の海外駐在員から、留学生やバックパッカ―までさまざまな日本人がやってきます。

それどころか、世界中から素晴らしい意欲を持った人たちが集まって来ます。歴史的にも海外からやってきて成功した人や企業は無数にある場所です。


ところが近年、日本からこられる人の傾向として「言われた任務でやってきた」人や、「入学するためにきた」人を含めて、敷かれたレールの上の通過点を目標だと思ってくる人が多い。「自分のその先の目的」を描かずにきていることに気づいていないんです。


「何のために、ニューヨークにきたのか」という「自分オリジナル」の目的意識を持ってニューヨークを味わうと、既存の人生の生き方を激動させることができます。

たとえば、単なる英語学習だけでなく、目標にしている会いたい現地の人と、何とかアポを取ったうえで滞在をすれば、短期語学留学であっても将来に得るものは大きいはずです。


単に「任務の仕事(任され事)をすること」や、「学校の授業(受ける業、と書く)」がニューヨークに行く目的ではないはず。自分の次の将来に繋げるためには、もう一段上の過ごし方が必ずある、それがニューヨークという場所です。



───これからニューヨークに行きたいなと思っている人は、何をすればよいでしょうか。

榮枝:まずは、「具体的な」高い目的を決めて「調べ始めること」。そして、ニューヨークに住む人から生の情報を得るべく、「繋がり」を自分から求めることですね。


たとえば滞在ビザの種類にしても、ビジネスの糸口にしてもインターネット上にはさまざまな情報がすでにあります。これらを徹底的に調べた上で、さらに実際に現地に住んでいるからこそわかる情報を加えると「圧倒的な力」に変わります。


自分で調べることもないままに何もかも「教えてください」という受動的な態度では、相手は貴重な情報をシェアする気にはなれません。

だから、人に教えてもらえるような人格であることも必要だと思います。「(能動な)人としてのあり方」を磨いておく。

たとえばできる限り自主リサーチしている姿勢は、相手に信用される第一歩を作りますよね。



ニューヨークで気付く「Pay It Forward」の「おすそわけ」の気持ち

───やはり、日本人がニューヨークに行ってみる価値というのは、あるのでしょうか。

榮枝:もちろんです。どんどんきていただきたいです。意外と、自分が普段みている視野というものは狭いものなんですよ。


たとえば、「千円札の絵を、お札を見ないで、紙に描いてみてください」といわれて、千円札の情報をうまく描ける人は少ない。大切なはずの「お札」でさえ、意識せずに眺めているだけでは、情報としては頭に入ってないんです。

こういった「見ているようで見えていないもの」に気づける価値が、ニューヨークにあります。


単に仕事や学校や観光で来るだけではなく「実はこんなこともあるんだ」、「実は自分はこんな事ができるんだ」ということに気付いてもらうために、私はデジタルインテリジェンスでの本業のかたわら日本人コミュニティーを中心に「NPO JaNet」の運営を理事長として務めたり、「一旗会」という起業家の会を運営しています。


これらを運営しているのは「これからニューヨークで何かに挑戦したい人」、「ビジネスを起こしたい人」同士が互いに協力しあえる場があれば、そこを目指してくる人も増えるだろうと考えたからです。

たとえば、グローバル企業のエグゼクティブの話を聞けるセミナーを開催したり、実際に企業に伺ったりする活動です。

先日はグーグルやロイターのオフィスに訪問させていただきました。信用される人の繋がりを広げる活動ですね。



───そのような、日本人が助け合える場を提供しているのは、なぜですか?

榮枝:これまで、私は広告エージェンシーの社員として業績を積み重ねることが自分のタスクだと思っていました。

ニューヨークで1つひとつ何かを成し遂げるにつれ、それは自分のチームや自分の企業の利益のためだけに閉じていることに気づきました。


実は、それらの業績が花開いたのは、これまでニューヨークで活動された方の実績や知恵をお借りしたからできたことです。ニューヨークの人達の力添えがあったから。アメリカのコミュニティのおかげだったんだなと気づいたからです。


思えば、私がアメリカに来たのも、先人が素晴らしい法人運営されてるのを見て「ここにくる!」と思ったわけですし。

だからこそ、自分へのリターンを考えるのではなく、少しでも誰かに「おすそわけ」できればと思いついたのです。そして私たちからもらった人が、次の誰かにおすそわけしていく。


そうすれば、よいことが連鎖して、世の中に幸せがあふれてきますよね。アメリカ映画の「Pay It Forward(向こうへ恩送りを)(邦題:ペイフォワード)」で紹介された概念ですが、「未来に向けて、身近に貢献する」がよりよい社会を作るのだと思います。



とにかく素早い行動を!それが海外で活躍する秘訣

───榮枝さんにとって、ニューヨークとは一言でいうとどんな場所ですか?

榮枝:ニューヨークとは、「私が私らしくあることを、応援しあう場所」かな。 英語では、「人間」のことを「Human Being」と言いますよね。


「Be+ing」は「あり+続ける」という意味で、「人としてあり続ける」、つまり「自分らしくあり続ける」と取ることができます。

そこには「Should=すべき」や「Could=できるかどうか」や「Try=ダメ元」なんて複雑なものはありません、Be=自分はどうあるのか、だけです。

ニューヨークはシンプルに「私が私らしくあることが当たり前」、そんな場所なんです。


「9.11 アメリカ同時多発テロ」や「ハリケーン・サンディ」など、ニューヨークでの災害にも直面しましたが、ニューヨークは街の結束力がすごいですよ。

誰もが自分から進んで他人に手を差し出すヒーローになるんです。他人の出方を窺うことなく、進んで「私らしさ」を発揮する人で溢れています。



───海外で働きたい人、活躍したい人へのアドバスをお願いします!

榮枝:海外で活動する事に憧れを持っているのなら、アメリカやニューヨークは選択肢に入れてほしいですね。

比較的行きやすい近隣のアジア圏よりも遠くてハードルが高い分、想定している以上の体験がここにはあると、保証します。負荷の多さは、考える筋力を増強させます。


そして、腹を括ること!「絶対にニューヨークに行く!」と。

とにかく今この瞬間から動き始めること!「30歳になったら……」とか、「貯金ができたら……」とか先延ばし発想ではニューヨークでは追いつけない。


「する」と決めたら日程を決めてリサーチして、早く行く。とにかく1歩目を踏み込むチカラが、ニューヨークだけではなく海外で働き、活躍するための秘訣です。



インタビューを終えて

こんにちは、今回取材を担当しましたライターの水澤です。

僕自身も、沖縄に住むという理想を持ち、2013年に東京から移住しました。

榮枝さんのお話を聞いて、現在の生活と理想とのギャップが大きければ大きいほど、行動にもつながってくると確信できました。


「ビジネスで大きなことを成し遂げたいなら、難易度も、得られるものも最高峰であるニューヨークを選択肢に入れて欲しい」榮枝さんの思いにふれることで、ニューヨークに行くことを心に決めた、 そんな新しい自分に出会えてもらえたらと思います。


(取材・執筆:PRライター 水澤陽介/編集:吉川実久)



<関連情報>

株式会社デジタルインテリジェンス

NPO法人「JaNet」

ニューヨーク日本人起業家相互協力の会「一旗会」

0コメント

  • 1000 / 1000